文庫を買って海外に帰る人に勧めたい本

・荷物のサイズ問題上、文庫限定
・どういうのが好みなの?と聞いたら「文字はなんでも好き!」といわれる(これ困ります)
という、縛りのあるリストです
  
 

f植物園の巣穴 (朝日文庫)

f植物園の巣穴 (朝日文庫)


レトロな日本で理系偏屈男子(既婚)がおりなす不思議の国のアリスです。
ほんとです。
するすると変なところに連れて行かれて最後本当におもいもよらない場所にたどり着くので是非読んで欲しい。
ずっとこれを誰の絵でよめば…佐々木倫子…いや…、と考えながら読んでましたが、黒田いずまさんで読んだら大変しっくりきました。主人公はだいたい「な、なんだってーー」というあの顔をしてます。してないつもりですが、外からはまるわかりです。
最近文庫になったばかりなのでまだ棚にささっている筈!
 
泣き虫弱虫諸葛孔明〈第1部〉 (文春文庫)

泣き虫弱虫諸葛孔明〈第1部〉 (文春文庫)


三国志が好きだったら~。
ものすごく聖人君子じゃない蜀のみなさんがおりなす笑い溢れる本です。三顧の礼とかひどすぎてひどすぎて。
ホラ話が好きだったら是非とも。でもあんまり本屋にないのよね…。
 
犬が星見た―ロシア旅行 (中公文庫)

犬が星見た―ロシア旅行 (中公文庫)


日記の名手による、夫と、夫の友人との、ロシア旅行記。
代表作は富士日記ですが、あれ分厚い重い上中下巻ということで今回は外す。日々雑記もすばらしいですが、旦那さんが亡くなられてからの日記なのでさみしい。よってこれを押します。
すごい底抜けの人間力でかかれていて、とうてい太刀打ちできない!娘さんは「人間ってみんな母くらいおもしろいとおもってたんですが、そんな事なかった…」ということをいわれるくらいおもしろい人のすぱっとした日記です。
なんかどっかしらが肩こりさんに似てる気がします。
 
血族 (文春文庫 や 3-4)

血族 (文春文庫 や 3-4)


鉄さんがすすめてくれてすごく面白かったです。
濃厚!ねっとりとした練り羊羹のように濃厚な暗闇!!
これが実話というのが恐ろしいような、あるいは羨ましいような…。
とても字がちいさい所と、全然本屋でみないところが難点です。
一つのビル全部本屋系の本屋だと置いてあると思う。
 
鉄さんおすすめだと風の影 (上) (集英社文庫)風の影 (下) (集英社文庫)もとてもおもしろかったけど、上下巻…むむむ…。
 
完全教祖マニュアル (ちくま新書)

完全教祖マニュアル (ちくま新書)


ぜりーさんが薦めてくれて読んだらとても面白かったです。
教祖になる、教団を経営するという視点から宗教を読み解く異色の新書。
このうえなくまじめな宗教入門書なんだけど、フォーマットがおふざけているので、売る人は大変だっただろうな…と思う。とても読みやすいです。
ちくま新書ベスト100に入ったロングセラーなので大きい本屋だと多分ある。
 
キッチン・コンフィデンシャル (新潮文庫)

キッチン・コンフィデンシャル (新潮文庫)


腹さんが薦めてくれてすごく変でおもしろかった。
書いた人はリア充だしナルシストだし下品だし自慢屋だけど、しかしめっちゃテンション高い空前絶後の料理馬鹿なのできらいになれない…。
「初めて食べた牡蠣。そう、これこそ真に意味のあるイベントだった。童貞を捨てた時とおなじくらいはっきり記憶している――むしろ快感はより強烈だったとさえいえる」
ば、ばか~~…。
絶版ですが古書店にはいればさくっとあるとおもいます。
  
黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)


文句なしの大傑作です!!! 欠点はそう…地味でまじめで重い。でも面白いよ!

二人は仇同士であった。二人は義兄弟であった。そして、二人は囚われの王と統べる王であった―。翠の国は百数十年、鳳穐と旺厦という二つの氏族が覇権を争い、現在は鳳穐の頭領ひづちが治めていた。ある日ひづちは幽閉してきた旺厦の頭領・薫衣と対面する。生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられた二人の王。彼らが選んだのは最も困難な道、「共闘」だった。日本ファンタジーの最高峰作品。

テーマは民族間紛争の相互協力です。
ファンタジーを読みたがる層は興味のないテーマで、テーマに興味がある層はファンタジーを読まないっていうな…。狭間の本は売りにくいです…。
でもとても面白いので全国の書店員が口コミでがんばってじわじわと売って割と名前が売れてきました!いい話でしょう!やった!
だから今気合いある系だと小さくても本屋の棚にあるとおもう。上野エキュートにはありました。
 

そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)

そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)


薄いし安いしぜひおまけに一冊。
城山三郎が亡くなったあと出てきた、奥さんを偲んで書いていたエッセイ。
こういうタイトルですが、講演会で緊張してたら最前列に奥さんがこっそり来ていて「シェー」のポーズをこっそりして和ませてくれたって逸話からスタートで、出会いの回想など臆面もなく「妖精」とか奥さんのこと呼ぶし、しかも何回も書くし、常にやわらかい筆致でよい本です。
長所は420円とお安いところ。短所はすぐ読みおわってしまうところ。
 
動物園にできること (文春文庫)

動物園にできること (文春文庫)


もしノンフィクションが欲しいナーと思ったら是非この人のを。なんでもおもしろいです。アニメ化もした「銀河にキックオフ!」の作者さん。すんごく視点がフラットでとっても読みやすいです。
これは「人間のエゴのかたまりといえる動物園は存在していていいものなのか?」「存在させるならその意義は?」という話。
どんなところでも取りあえず飛び込んで行って生で体験し、しかしそこのルールに染まらないでいられるのがすごいと思う。
 
パイは小さな秘密を運ぶ (創元推理文庫)

パイは小さな秘密を運ぶ (創元推理文庫)


カナダの人が書いた、大戦直後のイギリス少女探偵もの。でもめっちゃイギリスイギリスしてます。イギリス人もびっくりのイギリス度合いで各新人賞を総舐めにしました。確か9冠?
科学大好き娘さんが知恵と好奇心でずんずんすすむので楽しかった!
なんというか無敵少女だしめちゃくちゃだしけっこう腹黒くもあるんですが、妙に愛嬌があってどうしても好きにならずにいられないのです…。
ミステリのオチや犯人はかなりすぐわかってしまうがそういうところが大事なのではないのだ!
 
ストリート・キッズ (創元推理文庫)

ストリート・キッズ (創元推理文庫)




ドン・ウィンズロウはわたしもだいすき。
デビュー作、ストリートキッドが爽やか。犬の力が転機作で超ノワール。その中間にあるのが最新シリーズ夜明けのパトロールです。これの探偵役はサーファーです。
どれを読んでも面白いので、爽やか・重たい・その間のどれかすきなのを選ぶと素敵とおもいます。
 
MUSIC (新潮文庫)

MUSIC (新潮文庫)


ちょっとかわり種。
今月の新潮文庫新刊なのでたぶんどこにでもある。
1ページ目の文章のリズムが肌にあえばずっと楽しいし、そうでなければ最後まで何言ってるかさっぱりわからないとおもいます。
私は好きだけど、何を書いてもクロニクルのイタコ体質作家が書いただけに、ナンデあらそってんの?が人によっては全く訳が分からないだろーなーとも思う…。
スタバという名前の野良猫が主役の痛快冒険小説です。スタバ君(オス)は元気でよいです。
 
ほんとうは古川日出男アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)がマイベストですが、Amazonのレビューでわりと根幹にかかわるネタバレがガンガンでているので、出来れば書店で買ってください。でもこれも全3巻…。
 
華竜の宮(上)

華竜の宮(上)


華竜の宮(下)

華竜の宮(下)


ハヤカワ枠!
まどかマギカをゆうゆう下し前年度のSF大賞にかがやいたハードSFです。
天変地異があり殆ど水没した地球で、自分たちを改造して水の下に生きる人と水上都市に住む人達が話し合いをしようと頑張って見始めたところ、もっかい地球が大変動ぽくなり…。
主人公は官僚でだいたいネゴシエーションをしている小説です。
わたしも文庫オチを楽しみにしてました!問題は発売が9日ということです。まだ居る?
 
特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕


デンマークの警察小説で、暴走やる気なくし気味のベテラン刑事と、いまいち素性のわからないのんきでほがらか、しかしたまに超ダーティなシリア人アシスタントのバディもの。
彼らが追う事件の描写が超!しんどいので「北欧ミステリはいつもこんなや…」と暗澹としますが、シリア人アシスタントさんが出るとコメディぽくなるので最後まで手をとめることなく読めました。ていうかうっかり徹夜した。
バディ二人とも頭がいいので、どっちかがちょっとヒントを出すと二人ともハッとしてワーーーと展開するのです。スピーディ! なのでこれもうどやっても無理やん…って事件がだんだん手が届くようになるのが、こう、面白かった!
これ今回買わなかったらそのうち送るとおもうので焦らなくてもいいです。
 
チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)


チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)


弱点は暗い・寒い・しんどい! そして上下巻ということです。でもおもしろいよ。
スターリン政権下のロシアで「完璧な社会主義国家に快楽殺人者など存在しないよ!するわけないじゃない!」という偉い人の意見から、子どもが惨殺される事件が連続するも明るみに出ず…というこの事件を、足の引っ張り合いでうっかり左遷された刑事が、夫婦なので密告されたら一蓮托生の奥さんと「別にあなたを愛したことなんてなかったかも」「エッ」という心温まらないやりとりなどをしつつ、事件解決に奔走する話です。
実際にモデルとなった事件がありますが(これはしんどすぎて読むの止まってる…)、スターリン時代に置き換えてかかれてます。映画版権をハリウッドがもう買った筈。